第15章 道
「どう言う、意味ですか?」
「 空良、俺ね、本当は知ってたんだ。空良が信長様の事を好きだって事」
「えぇっ!?」
なぜ、どうやってそんな事を!?
「夏祭りの日、城下に忍び込んでいた時に偶然二人の姿を見かけたんだ。手を繋いで一緒に歩く二人はどこから見てももう恋仲同士で、信長様があんなに優しく微笑む顔も、空良が恥ずかしそうに俯く姿も初めて見て、俺焦っちゃった。あぁ、早く空良を取り返さなくっちゃって」
「蘭丸様..........」
あの夏祭りは私にとっても忘れられない思い出の日。あの日はただの男と女として信長様と過ごした一日だった。
「そんな顔しないでよ。出来れば俺が空良を幸せにしたかったけど、その相手は俺じゃなかったみたい。信長様と生きて行くのは大変だと思うけど、信長様が空良をとても大切に思ってる事は俺が保証する。少なくとも俺は、あんな優しい顔をする信長様は見た事がないから」
「...........はい。蘭丸様.....ありがとうございます」
涙は、余計に溢れた。
「俺はこれから、復讐のために心を鬼にしてしまった顕如様を支えたい。空良が、恨みや怒りを超えて信長様を愛した様に、俺も顕如様がその気持ちを乗り越えて以前の優しい顕如様に戻れる様に頑張るから」
「私も、お二人の無事を毎日お祈りします。お二人は私にとって、かけがえのない家族ですから。どうぞお元気で」
「うん。 空良も元気でね。信長様に泣かされたらいつでも迎えに来るからね」
“俺たちが行くのは滅びの道じゃない。”
蘭丸様は最後に力強い言葉を残して顕如様と夜の安土を去って行った。
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「蘭丸、堪忍な」
「え、いきなりどうしたんですか?」
「いや、ただそう思っただけだ」
お前が 空良を大切に思っていた事は知っていた。信長を討ち果たした折には、お前と空良を一緒にさせてやりたいと思っていたのに、それを叶えてやれず堪忍な。