第15章 道
天主を降りて御殿も抜け草履に履き替えると、どんどん細く狭くなっていく通路を通って行く。
信長様の持つ提灯だけを頼りに歩く夜の地下牢へと通ずる道は、昼間の掃除の時とは違い暗くて心細くて............、こんな所にお二人が入れられているのかと思うとまた切なくなった。
不安な気持ちが自然と信長様の手を握る手に現れたようで、信長様も心配するなと伝えてくれるかのように、優しく握り返してくれる。
信長様は、どうするのかはお二人に決めさせるとおっしゃっていたけど、その意味合いが私にはまだ読み取れない。
私とて、お二人を前にどうすれば正解なのかは実は分からない。ただ生きてほしい。その気持ちだけでここまで来てしまったけど........
地下牢への入り口近くに来ると、信長様は見張りから見えない位置で歩みを止めた。
「暫し待て」
「?」
まるで何かを待つかのようにその目は地下牢に向けられている。
「あの、」
「しっ、どうやら始まったな」
話し掛けようとする私の口を指で押さえ、信長様は愉しそうに口角を上げた。
「ぐあっ!」
ガチャーン!
「貴様ら!グッ!うぐっ!!」
キィーーーン
なにやら、地下牢から人の叫び声と物のぶつかる音がして来た。
見張りの人も音に気づき何事かと地下牢へ入って行く。
「お前たちっ、ぐぎゃあ!!」
凄まじい人の叫び声。今の声は、あの見張りの人だろうか?
「の、信長様?」
一体牢屋で何が起きているのか、恐ろしくて信長様の懐に潜り込むように体を寄せた。
「案ずるな、直に分かる」
怖がる私の身体を抱きしめてくれるけど、信長様は愉しそうだ。
やがて激しい音と人の声は止み、火の光と共に足音が近づいて来た。
「来たか。.........空良、俺の側を決して離れるな」
「はい」
私を背中に隠すように、信長様は口角を上げたまま地下牢の足音を睨んだ。