第15章 道
朝から腰砕け状態でふらふらな中、何とか支度を済ませた私は、信長様と手を繋ぎ共に広間へと向かった。
広間には既に秀吉さんをはじめとする武将達が集まっていて、信長様が広間へ入ると皆一斉に頭を下げた。
その真ん中を堂々と歩いて行く信長様の手を解こうとしても離してはくれず、皆の堪えるような笑い声がする中、上座まで連れて来られてしまった。
「の、信長様、私は下座に座りますので離してください」
「ならん、貴様は俺の隣で食べよ」
腰を下ろした信長様は私の腕を引っ張り座らせようとする。
「むむむ無理です。身分が違いすぎます。ここにいらっしゃる武将の方々にも言い訳が立ちません。信長様、っぶっ!」
抵抗する私の身体ごと引き寄せられ抱きしめられた。
「わわわっ、み、皆が見ております!離してください」
「離れていては、何かが起こった時直ぐに助ける事ができぬ。俺の側にいろ」
「っ、」
信長様はどんな時も真っ向勝負で、気持ち良いくらいに隠す事をしない。
「あの、.......そういう事は二人で部屋で済ませてから来て貰えませんか?」
迷惑そうな声のする方へ真っ赤になった顔を向けると、それは心底うんざりした顔の家康さんだった。
「い、家康さん!?」
「褥の上で先程も教え込んだのだが足りなかったようだ」
信長様も、負けじとその嫌味に答える。
「の、信長様!」
皆の前でなんて事を!
「空良、信長様がいいとおっしゃってるんだ。俺たちは別に構わない。気にせず隣に座らせてもらえ」
困り果てて失神しそうな私に秀吉さんが助け舟を出す。
「そうだぞ。お前は出会いからして強烈だったからな。今更そこに座ったとて何も驚きはしない」
クククッと喉を鳴らしながら光秀さんなりの?助け舟を光秀さんも出してくれた。
た、確かに、初めて会った時は信長様の命を狙う刺客で、しかもこの広間を覗いているところを光秀さんに捕まって広間にいる皆の前に連れて来られたんだっけ。
「俺も構わない。それよりも、せっかくの俺の料理が冷めちまう。覚悟を決めてそこへ座れ」
「えっ、これ、貴方が作ったんですか?」
いつもこの武将達の中にいる眼帯の綺麗な男の人。男性の厨番も勿論いるけど、一国の武将がお料理をするなんてとても意外で...