第14章 寄り道 後編
「種子島は貴様の細腕では狙いを定めにくいが、これならば両手をしっかりと添えれば確実に仕留められる」
中々手を出そうとしない空良の手を強引に掴み取り、ぴすとるを握らせた。
「!?」
「弾は込めてある。この穴に指を入れて強く引けば弾は飛び出す。簡単だ」
顔面蒼白の驚いた顔で、空良は何度も頭を左右に振る。
「どうした?俺を、殺したいのであろう?」
ぴすとるを握らせた空良の小さくて柔らかな手に真正面から己の手を被せる。
「手伝ってやる」
「やっ!」
ぴすとるを離そうとする空良の手を押さえつけて強引に指を重ねて入れる。
「やめてっ!離して!」
引き金を引く事を抵抗する人差し指を、更に俺の指で強く押して行く。
「お願い、信長さ、.....っきゃあっ!!」
焦りと共に放たれる言葉の途中で、俺に押された空良の指はぴすとるの引き金を引き切り、ドンツと言う轟音をたてた。
あまりの衝撃に空良の身体は後ろに飛ばされ、弾は俺の頬を少しかすった.。
「っ、...........」
頬を伝う血の感触と硝煙の匂い。
「あ、..........ぁ、」
空良は身体を震わせて、ぴすとるを手からガチャリと落とした。
「どうした、しっかりと狙え」
俺は更に空良を追い詰める。
落ちたぴすとるを拾い、空良の手に再び握らせ己の胸に当てた。
「いや、やめてっ........」
「遠慮する事はない。貴様の父と母の恨みを晴らせばいい」
「っ.............」
俺は、この女を泣かせたいのだろうか?
これ程までに追い詰められても空良は決して涙を見せぬ。
華奢で小さな身体を震わせ、できうる限りの抵抗をしようとする空良に見惚れてしまう俺は、もう完全に奴に捕われている。
「空良.......」
再び空良に撃つように促そうとした時、
ドンドンドンドンッ!!!
「御館様、先程の音、いかがしましたか?」
ぴすとるの音を聞いて家臣が駆けつけ慌てた様子で襖を叩いた。