第13章 寄り道 中編
「先程も抱いたばかりだと言うのに、出会った頃と変わらず初心な反応だな」
くくっと、顔を崩して笑う信長様は本当に素敵で、私の心はもっと騒がしくなる。
シュルル.......と、私の帯に手をかけ信長様は鮮やかに解いていく。
衣擦れの音だけが静かな部屋に響き、私の身体はそれだけでも熱くなっていく。
帯を解き終わると信長様は袷を開いて私の肩から下ろした。
襦袢の紐にも手を掛け解くと、それも脱がそうとする信長様の手を止めた。
「あ、待って下さい」
「.....何だ?」
分かりやすく不愉快そうな信長様。でも今夜は月明かりが眩しいくらいに部屋を照らしていて......
「.....障子を、閉めて下さいませんか?」
この宿一軒全てが貸切となっている今夜、誰にも見られる心配はなく見事な中庭を望めると言って、中庭に面した障子を私達は開けっ放しにしていた。
このまま襦袢を取られたら、この月明かりに裸体が晒される事になってしまう。
「その願いは聞いてはやれん。閉めては貴様の綺麗な身体を愛でる事ができぬ」
ニヤリと笑うとスルリと私の襦袢を開いて剥ぎ取られた。
「い、いじわるっ、...............っあ!」
隠そうとする間も無く両手を絡め取られ、そのまま褥へと押し倒された。
私の両手を褥に沈ませる様に抑え付け、信長様は上から私を見下ろした。
「やっ、.........見ないで..........」
いずれは、信長様の元を去ると思っていたから気にしない様にしてきたけど、恋仲となった今は違う。
やはり、信長様の過去のお相手の事を考えてしまう。
沢山の綺麗な女人を相手にされてきた信長様の目に、私はどう映っているのだろう?
確かめたくても、その瞳が失望の色に染まっていないかを見る勇気すらなく、恥ずかしさも相まって私は信長様から目を逸らしてしまう。
「何も隠すな。しかと見せよ」
「っ、.......でもっ」
「空良、この綺麗な身体は俺だけのものだと言う事を忘れるな」
「っ、...はい」
熱っぽい目で綺麗だと言われて、お腹から胸にかけてキュンと締め付けるような甘さが広がって行く。