第12章 寄り道 前編
「じゃあ私の事、なんだと思ってるんですか?」
絶対に小動物だと思ってる!
「貴様は俺の恋仲の女だ」
「!?」
予想した言葉とは違い、途端に文句が言えなくなった。
信長様は私を抱きしめながら私の頭に軽く口づける。
「こい、...なか...........?」
新鮮な響きに胸がトクンと打つ。
「そうだ、恋仲だ」
甘い響きにドキドキするけど........
「恋仲と、侍女と何が違うんですか?」
もう大抵の事は致してしまった私達..........
「侍女はやめだ。あれは貴様を俺の手元に縛りつけるための口実に過ぎない。だが恋仲は、そうだな..........」
信長様はイタズラな顔で私を覗き込み軽く口付けた。
「なっ、な......みんな見てます」
さっきまで、顕如様と織田軍の何百と言う兵達の前で、しかも丘の上で丸見えな中口づけられたって事はもう置いておいて。こんな急に人前では慣れていないから、顔が急速に熱くなっていく。
「ふっ、恋仲とはそう言うものだ。いつ何時でも、愛おしいと心を通わせあった相手に口づけていい」
「そ、そうなんですか?」
本当に、そう言うものなの?
何だか、周りからはクスクスと笑い声が聞こえるけど、様々な方と経験を積んで来たであろう信長様が言うのだから、きっとそうなんだ。
じゃあ私も.......してもいいかなぁ.........?
擦り込み効果とは恐ろしいもので、新しい人生を始めた私の目の前にいたのは信長様。
そしてその信長様が全てとなった私はあまり疑いもせずに、信長様にされた通り、ちゅっと信長様の唇に触れるだけの口づけをした。
「っ、........貴様、なんの真似だ」
なのに、当の本人は落馬するんではないかと思うほどに体を退け反らせて目を見張った。