第11章 傾国の姫
「お前の屋敷を襲ったのは、信長ではない」
「...................................え?」
「顕如様っ!!」
蘭丸様が叫んでる。
一体............何?
ひざまづいているのに、膝の力が抜けて行くような感覚に襲われる。
「お前を助けたのは単なる偶然だったが、信長がお前の屋敷を襲ったと嘘を教え、復讐心を抱かせた」
こんなに近くにいるのに、顕如様の声が遠くから聞こえているみたいだ。
「どうして.........そんな事...........?」
声が......震える
「両親を無残に殺され何も分からぬお前を使えると思った。それだけだ」
「嘘...........嘘です!そんな事.........」
「嘘ではない。お前は私の思惑通り、信長を仇だと信じて奴をここまで引っ張って来た。ふっ失敗に終わったがな」
ーーーーーーー!!!!
自分の中で、何かがガラガラと崩れて行く。
「っ、..........はっ、...っ」
息が...............出来ない。
何をどう受け止めれば良いのか分からない。
私が、..........私の今までして来た事は、..........全て間違ってたって.......事?
苦しい..........、苦しい............、苦しい!!
誰か..........
「空良、大丈夫だ。ゆっくりと息をしろ」
ふわりと、絶望に震える身体を信長様が抱き締め上げた。
「っ..........信長様、私........、私...........」
ずっと、間違ってたなんて!
止まった筈の涙が再び溢れ出した。
「もう、何も考えるな」
「そんな......できない、私....ずっと信長様の事を..........っ..........うーーーー」
「貴様は何も知らなかった。それで良い」
抱き抱えられても頭の中がぐちゃぐちゃで、手足をバタつかせて泣きじゃくる私を信長様は押さえ付けるように抱きしめる。
「顕如と蘭丸を連れて行け!」
耳元で信長様の命令する声が聞こえる。
「空良っ、ごめん。ごめんね」
蘭丸様の声が聞こえたけど、もう顔を上げる勇気はなかった。