第11章 傾国の姫
「「信長様っ!!」」
叫んだのは、私だけではなく、
キィーーーンと、その刀を顕如様の前で受け止めた蘭丸様もだった。
「蘭丸様っ!」
確か拘束されてたはず!
「ほぅ蘭丸、この短時間で拘束を解くとは流石に優秀だな」
信長様は心底嬉しそうに蘭丸様を見ている。
「蘭丸お前っ!信長様の小姓として申し分ない扱いを受けながらなぜ裏切った!」
刀を抜いて蘭丸さまに向けながら、秀吉さんが叫んだ。
「くっ、......俺は................」
信長様の刀を受け止める蘭丸様の瞳が苦しそうに揺れている。
私にはその気持ちが分かる。ううん、長く織田軍の小姓として仕えていた分、蘭丸様の方が私の何倍もお辛いに決まってる。
「信長様、お願いです。命だけはお助け下さい」
信長様の手を離れ、私は顕如様と蘭丸様の前に出て信長様にひざまづいた。
「何の真似だ」
信長様が怪訝そうに私を見つめ、蘭丸様を刀ごと弾いた。
「顕如様と蘭丸様は私にとって命の恩人であり大切な方々です。命はどうか........」
..............嫌な、沈黙が流れる。
顕如様の無事を願う兵士達の視線と、私の行動を凝視する織田軍の武将達。
「ふっ、.....ふはははっ、ははははっ!」
凍りつきそうな沈黙を破ったのは、顕如様の笑い声。
「空良、哀れな娘よ........ククッ」
「顕如様?」
ひざまづいたままうしろを向くと、薄笑いを浮かべる顕如様と目が合った。
「私はお前の命の恩人ではない。ただ、都合が良かったから助けただけだ」
ククククッと、顕如様は笑うことを止めない。
「お前は私の思惑通り良くやってくれた。だがまさかこんな男に絆されるとは........誤算であった」
「どう言う、意味ですか?」
何を、............言っているの?
聞きたいような、聞いてはいけないような.............、
ドクンドクンと、胸が早鐘を打つ。
「顕如様、それ以上は!」
蘭丸様が青白い顔をして話を止めようとするけれど、秀吉さんの刀がそれを阻むように向けられ、口をつぐんだ。