第11章 傾国の姫
「空良、大丈夫だ」
私をふわりと抱きしめ返して耳元で囁くと、今度は信長様が手を上げた。
ザザザザザッ!!!!
っと、顕如様の兵とは比べ物にならない数の兵が、顕如様たちに鉄砲や弓矢、刀など、ありとあらゆる武器を向けて、四方から囲んでいた。
「あれは........?」
よく見ると、木々の上からも人がたくさん顕如様たちを狙っている。
「家康に用意させた伊賀者達だ。奴らは情で動く事は一切ないが、金を積めばすぐさま動く。信用ならん連中だが、こういう時には役に立つ」
ニヤリと、その顔は自信たっぷりに口元に弧を描く。
「武器を捨てそのまま投降すれば、兵達の命は助けてやる」
「くっ、おのれ信長.......」
圧倒的な力の差を見せつけられ、顕如様も動けないまま苦虫を噛み潰したような顔で信長様を睨んだ。
「顕如様、我々は命など惜しくありません!」
「そうです、死はもとより覚悟の上、打って出ましょう!」
「顕如様!」
武器を突きつけられながらも、顕如様の兵達は打って出ようとあちらこちらから声を上げる。
「無駄だ。貴様らが一歩でも動けば、即顕如の首が飛ぶ」
忍びの一人がいつの間にか顕如様の背後に立って、喉元に小刀を突きつけていた。
「...........くっ.......無念..........」
ガチャン、ガチャン、ガチャン.......
一人、また一人と悔しさを顔に滲ませ武器を手から落としていく。
丘の真ん中に堂々と立ち言い放つ信長さまは、一瞬で、一滴も血を流す事なく戦を終わらせてしまった。
「顕如と蘭丸を捕らえよ」
近くにいた兵が二人を拘束し、信長様の元へと連れて来た。
それと同時に、秀吉さんや光秀さん達、安土の武将達も丘の上へとやって来た。
「やるなら早く殺れ!貴様の顔など、長々と見ていたくは無い!」
拘束され連れてこられた顕如様は憎しみを露わに暴言をぶつける。
「ふっ、死にぞこないが。そんなに死にたいのなら望み通り引導を渡してくれる」
信長様は冷めた目で刀を抜くと、顕如様目掛けて振り下ろした。