第11章 傾国の姫
「.....んっ.............」
唇を合わせるだけの、優しい口づけ............で、信長様が済むはずもなく、
「んぅ...........」
容赦なく舌を絡められた瞬間、ヒュンッ!と、何かが私たちの真横を横切った。
驚いて唇を離し横を見ると、
ビィーーーーーンと、私たちの横に立つ木に刺さっているのは弓矢。
口づけてる最中だったけど、咄嗟に信長様が密着した私たちの身体を傾けてくれなかったら刺さっていた。
「..............ふんっ、恋しい女との逢瀬を邪魔するとは、余程女に不自由しておると見える」
唇を離した信長様はチッと舌打ちをして、弓矢の飛んで来た方向を睨んだ。
そこには、弓を構え怒りを露わにした顕如様の姿が...........!
「顕如様っ!」
「空良、何をしている?これ以上私を失望させるな」
「っ............」
キラリと、足元に落ちた懐剣が光った気がして、思わず目線をそこに向けた。
「その懐剣を拾い奴の命を奪え!」
頭の中を撫でる様に、顕如様の声が響く。
「どうした、空良!」
「っ.........出来ません」
「空良!!」
「ぎゃあぎゃあ喚いて煩い男だ。そんなに俺を殺したいのなら、貴様が直接殺しに来い」
「っ、信長様!」
私の肩を持って庇う様に、信長様が叫んだ。
「二度も女に命を狙わせておいて、貴様たちは遠巻きに見物とは......腰抜けどもの集まりだな」
信長様は更に顕如様を煽る言葉をつづける。
「おのれ、信長」
ワナワナと、怒りに顔を歪ませる顕如様は、その場で片手を上げた。
ザッ!と、私たちの立つ丘を囲む様に、顕如様の兵が私たちに向かって弓矢を構え茂みから立ち上がった。
「貴様もここまでだ信長!」
「顕如様..........」
(もう、逃げようがない。せめて私が盾となって.......)
無駄な事とは分かっているけど、少しでも盾になろうと信長様を抱きしめた。