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叶わぬ未来の夢を見る【イケメン戦国】

第11章 傾国の姫



目の前に見えるのは、見晴らしの良い丘。

こんな山奥の隠れ家なのに、なぜあんな丘が存在するんだろう?

戦に出たことのない私でも見れば分かる。
あの丘の上に立てば、四方全てから丸見えで容易く攻められてしまう事を........


「空良.......」


蘭丸様が私の手を握ってくれる。


「顕如様やはり....」

蘭丸様は私の横に立つ顕如様に何かを言おうとしたけれども、

「蘭丸、これは空良の為でもある。信長の元に捕われ戻ってきた空良を良く思わぬ者も大勢いる。空良がこれからも我らと共に過ごすためにも、見事信長の命を討ち取りその者達を納得させるしかないのだ」


「そんな、それはおかしいです。だって空良は俺たちのために捕われて、辛い任務に耐えて来たのに」


「蘭丸様....」


あぁ、まただ。

お優しい蘭丸様が、顕如さまに意見するなんて初めて見た。

私の行く所、こうやって人を争いに巻き込んで、災を呼び起こしてしまうのかもしれない。


「戯言はそこまでにしろ。時間だ」

顕如様は、信長様に昔付けられたと言う顔一面に大きく斜めに斬られた傷跡をゆっくりと指先でなぞった。


「空良、我らが悲願の時が来た。行くが良い」


まるで、旅に出る者を送るかのように、顕如様はそっと私の背中を丘の方に向かって押した。



丘は、小さな丘で、少し歩けば一番上に到着するはずなのに、進めば進むほど足取りは重く、その道のりは遠く感じて、行きたくないともう一人の自分が訴えてくる。


胸元には、顕如様から渡された懐剣が入れられていて、更に私の心を重くして行く。


(でも、もしかしたら信長様はお一人では来ないかも知れない。)


そうだ、なぜその可能性を忘れていたのか。

どんなに愛していると愛を囁いてくれていたって、私は信長様に薬を盛って城を逃げ出した女、つまりは裏切り者だ。

そんな女の為に、一人でこの丘を登って来るなんて事ある筈が................ない...............のに..........




「...............うそ.................」


反対側の丘を一人で登って来るのは、間違いなく、私が2日前に別れを告げた人。


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