第11章 傾国の姫
「信長の命を取り損ね、信長に堕ちた女など、どうすると言うのです?」
男は、私をいやらしい目で上から下まで睨む様に見た。
「そう言うな。空良は私の指示により信長の女になっただけの事。我らの仲間である事に変わりはない。そうだな、空良?」
「は..............い」
「ふんっ!あの魔王をたらし込むとは、どんな手管を使ったんだか。大人しい見た目からは想像できぬが恐ろしい女だ」
顕如様の言葉は届かなかったのか、男は私を更に貶める。
「お前達の気持ちも分かる。だからこそ空良には今一度、信長を撃つ機会を与えてやろうと思う」
ザワザワと、私の胸の中と皆の動揺が同じ様に騒いだ。
「どう言う事ですか!?空良に何をさせるつもりです!?」
蘭丸様が声を上げた。
「大したことではない。信長が一人で現れやすい様に、空良には見晴らしの良い丘の上で一人、信長が来るのを待ってもらう。もちろん手ぶらではなく武器は持たせる」
顕如様は、事も無げに言う。
嫌な予感は当たるもの。
顕如様は、私を囮りにするつもりなんだ。
「.........い、嫌です。私にはそんな事.....きゃあ!!」
言葉は最後まで言う事はできず、代わりに鋭い痛みが頬を襲い、私の体は畳の上に倒れた。
な.......に?
「空良!!」
蘭丸様が大声を出して私のもとへ駆け寄った。
「ぃっ.............っ!」
一瞬の事で、何が起こったのかよく分からなかったけど、僅かな血の味を口内に感じてヒリヒリとする口元に指を当てると指には血がついていて、隣の男に強く叩かれたのだと分かった。
「空良大丈夫?」
蘭丸様は、床に倒れ込んだ私をゆっくりと起こしてくれた。