第11章 傾国の姫
「私は、.........」
蘭丸様や顕如様達といたい。
これが今、私が答えなければいけない言葉だ。
けど、
「私は、........誰にも傷ついて欲しくない。信長様にも、安土城の武将達にも、もちろん蘭丸様や顕如様達にも」
「空良...........?」
「蘭丸様も辛いはずです。わずかな時でも、私は安土の人々と生活をして、彼らが決して悪だとは思えなくなりました。蘭丸様だって、そうでしょ?」
だから、どんな時も信長様を呼び捨てではなく様と呼ぶし、本能寺の夜も、そして今も、蘭丸様の顔はとてもお辛そうだ。
「例え空良の言う通りだとしても、俺は顕如様のためなら信長様も、安土の武将達も皆斬り殺すよ?」
蘭丸様の、大きな目が迷いで揺れている。
「う、嘘っ!そんな事できっこない!だって.....」
「そこまでだ空良!」
蘭丸様の背後から、低くて少し怒りを含んだ声が聞こえてきた。
「顕如様..........」
「蘭丸をあまり困らせるな。お前に言われると蘭丸とて辛い」
「っ、........ごめんなさい。私....」
蘭丸様がお優しいからって、自分の気持ちばかりをぶつけてしまった.....
「ううん、気にしないで空良。俺なら大丈夫だよ」
「蘭丸様..........」
絶対に、無理されてる。
蘭丸様の顕如様への忠誠心は本物だけど、蘭丸様に迷いがある様に思えるのは、私だけなんだろうか?
「蘭丸、空良、作戦会議を始める。広間に行くぞ」
「「はい」」
私達はお互いに色々な思いを秘めたまま、顕如様に連れられ作戦会議のある広間へと足を向けた。