第10章 月の姫
「..............はっ、」
私の顔の横に付いていた腕の力が抜けたのか、カクンっと肘が折れ曲がり、大きな息を吐いた。
「これは..................っ、空良、貴様..............!?」
苦しそうに、けれど大きく目を見張り信長様は私を見る。
「.........................」
何も、言葉が出てこない。
「くっ、..........ダメだ空良、貴様は何処へも行かせん」
目の前で突如襲い掛かった薬の作用と闘うように、信長様はギリギリと歯を食いしばりながら耐え、私の身体を自身の体を重ねて押さえ付けた。
「っ.........空良、..........」
ごめんなさい..........
「空良、.........俺は貴様を絶対に逃さん!!」
ごめんなさい..............
息遣いがかなり苦しそうになりながらも、信長様はおでことおでこを寄せて私に口づけようと試みる。
「っ、空良っ!!」
目がもう虚で、私のことは多分見えてない。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
「..........ごめんなさい」
口づけようとしたまま動きが弱くなっていく信長様の頬に手を寄せ私から口づけをした。
「.......................っ、」
正気をとり戻したような目が一瞬私を見たけど、
「......... 空良.......行く......な...........」
ずるりとその身体は力を失い、半身を私の上に乗せたまま眠りに落ちた。