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叶わぬ未来の夢を見る【イケメン戦国】

第10章 月の姫



信長様は、少し顔をしかめて唸るような表情を見せたけど、


「やはり貴様は面白い。俺に条件を突き付けるとは、まるで月の姫の様だな」


ニヤリと口角を上げると、私に差し出した盃を膳に戻した。


「月の姫って、竹から生まれたあの?...........信長様でも御伽話をご存知なんですね?」


「何だ、魔王は御伽話を知らぬとでも思ったか?俺にも幼き頃はある。乳母がよく読んで聞かせてくれた」


月の世で過ちを犯し、この地へと飛ばされ竹より生まれた月の姫。美しく成長をした月の姫を手に入れようとする公達たちに、月の姫はそれぞれに難題を課す。


「良かろう、その条件のんでやる。どの道俺は天下を取る。貴様を月には帰さん」


自信たっぷりに言い切り、口元に弧を描くこの方は、あの物語の公達とは違い、近い未来にきっと天下を取るのだろう。ただその時、その場に、私がいないと言うだけの事。




「では、交渉成立ですね?お酒をお注ぎします。どうぞ」

手の震えを何とか止めて、お銚子を手に取った。

「ん、」

とくとくと、お酒が信長様の盃に注がれていく。


「お団子もどうぞ」


お銚子を置いて三方を持ち上げ信長様にお団子を勧めた。


「貴様が作ったと言っておったが、台所に立った事があるのか?」

お団子を一つ手に取りぱくっと丸ごと口に入れながら、信長様は私に質問をする。


「勿論です。家事全般は何でも致します。母上に付いて日々色々と習っておりましたから」

大名の姫君ともなれば台所に立つ事はないけれど、小さな国の武家の娘たちは皆、何でも一通りのことは出来る様に育てられる。


「ん、美味い。次は飯を作れ。貴様の作った飯が食べてみたい」


信長様はもう一つ団子を手に取り口に放り込む。


「その作った食事に、毒を盛るかもしれませんよ?いいんですか?」    


「構わん、逆に貴様を抱く口実ができるしな」

楽しそうに笑うとお酒を口に運んで一気に飲み干し、私はその空の盃にまたお酒を注いだ。


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