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叶わぬ未来の夢を見る【イケメン戦国】

第10章 月の姫



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「今宵は満月なので月見団子を少し作りました。後で少し、廻縁で月を見ながら食べませんか?」


夜になり、夕餉を済ませたお膳を片しながら、信長様を月見へと誘った。


「................昼間の芋といい、この団子といい、貴様が俺に何かを勧めてくるなど、一体どう言った風の吹き回しだ?」


信長様は片眉を上げながら、私を怪しげに見る。


「べ、別に......この間の髪飾りと花火のお礼です。これくらいしか、私にはできませんから」


憎まれ口しかきいてこなかった私がこんな事、確かに驚かれても仕方ない。


「貴様からの礼は既に褥の上で貰っておるが............もしや、毒入り団子ではないだろうな?」 


脇息にもたれた信長様は悪戯な笑みを浮かべ冗談めかして言う。


「そうかも知れませんね。嫌なら食べて頂かなくて結構です。全部私が食べますから」


毒入りと言う言葉にどきりとしたけど、今夜だけは絶対に気づかれてはいけない。

普段通りに可愛げのない態度で言い返し平静を装った。


「ふっ、昼間にあんな大きな芋を一人で食っておいてまだ団子も食べるのか。その華奢な身体のどこに入っていくのか、後で確認せねばな」


信長様は私の体の輪郭を指先でなぞりながら、艶のかかった声で言う。


「で、ではご用意致しますので、先に廻縁でお寛ぎ下さい」


指先が少し着物越しに触れただけだと言うのに、体は勝手に熱を持つ。


明日からは、感じることのできない熱.......
私は、一生この方への気持ちを胸に秘めて、敵方として生きて行くんだ。




お酒の膳と月見団子を乗せた三方を信長様の前に置いて、私も横に腰を下ろした。


「貴様も飲め」

昨夜同様に、信長様は盃を私に差し出す。


「ですから私は.................」

これでは昨夜と同じだ。
言いかけて、私は少し考える。



「........今夜は飲めません。けれど、信長様が真の天下人となられた時に、そのお祝いとして一緒に飲ませて頂けたらと思います」

何故だか分からないけど、そんな言葉が自分の口から出て来た。



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