第10章 月の姫
「お芋..........入ってきてないか台所に聞きに行こうかな.......」
きっと信長様だって、焼き芋食べたいよね?
「でも魔王が焼き芋をホクホク食べてる姿は想像できないけど......ふふ」
.............................って、気が付けば、いつもこうやって信長様の事ばかり考えてる。
朝も、昼も、夜も........本人の腕の中にいる時でさえも、苦しい位に信長様の事が好きで頭から離れなくなってる。
「はぁ〜、やっぱり食べたいし、聞きに行こう」
枯れ葉の山を見つめていても答えは出ないし、やっぱり食べたい私は台所へ行く決意をしたその時、
「空良」
静かに、でもはっきりと私の名を呼ぶ声が背後から聞こえてきた。
「誰?」
私の背後は庭木が生い茂っているはず.......
「俺だよ、蘭丸」
えっ?
「ら、らんま......」
「しぃ〜、声を出さないで」
蘭丸様?と聞き返す前に言葉を遮られた。
「そのまま振り向かずに掃除をする振りをしながら聞いて」
「は、はい」
私は蘭丸様に言われた通り、竹箒を動かした。
「.......でも、どうしてここに?」
突然の蘭丸様の出現に私は動揺を隠せない。
「忘れたの?俺は信長様の小姓だったんだよ?この城の事なら何でも知ってるよ?」
「そ、そうでしたね」
蘭丸様に会う時は、顕如様の隠れ家で、顕如様の忍びとしてのお立場で会っていたから、すっかり信長様の小姓だと言うことが頭から抜け落ちていた。
それにしてもどうして........?
「空良を迎えに来たよ」
私の疑問に答えるように、私の手をギュッと握りながら蘭丸様は言った。