第9章 休戦日
「.......まさかとは思うが、ここまで来てお預けか?」
信長様の手を止めた私の手の上にもう片方の手を置いて信長様は笑いながら私を覗き見る。
「そ、それは............」
抱かれそうになると、ダメだと言って手を止める事が条件反射の様に擦り込まれていて、どうしても理由を求めてしまいたくなる。
恋仲であったなら、こんな時は何も言わず素直に身を委ねるのだろうか?
「空良」
言葉に困った私の身体を反転させると、大きな両手で頬を包まれた。
「........信長様」
「今宵はその強情を封印しろ。ただの男として、貴様を抱きたい」
「.......んっ」
優しく啄むだけの口づけをすると、信長様は私を抱き抱えた。
ただの男として......
それは一夜限りの魔法の言葉。
決して思いを口にはできないけど、今夜だけ、私も一人の女として好きな人に抱かれたい。
答えを言葉で伝える代わりに、ギュッと、信長様の首に腕を回して抱きついた。
信長様はそんな私の髪に唇を押し当てながら、私を褥へ横たわらせた。
ドキドキと鼓動が煩く騒ぐ中、信長様は解きかけだった帯を再び解いて行く。
毒針で信長様が自身を刺して以来、抱かれない夜の方が少ないのに、いつもはぎゃあぎゃあ抵抗したり憎まれ口を叩きながら快楽へと落とされてきたから、こんなに静かに帯の解かれていく音を聞くのは初めてで...........
「ふっ、正に今から生娘を抱くと言った感じだな」
帯を解き終えた信長様は、ただただ緊張して固まったままその成り行きを見ている私を見て笑った。
「あの.............」
何かを話した方が緊張がほぐれそうで、口を開いた途端、信長様が素早く着物を脱いで裸体を晒し、私に少し被さってきた。
「っ...............」
鍛え上げられた身体が行燈の灯りに照らされ目の前で浮かび上がれば、緊張は頂点に達してしまい....
「そんなに緊張するな、俺にも伝染する」
そんな私を見て可笑しそうに笑うと信長様は静かに私の着物を開いた。