第9章 休戦日
口づけあっている間に花火が終わり、私は再び信長様の馬に揺られて城へと戻った。
お互いに湯あみを済ませ天主へと戻った時は既に夜も遅くなっていた。
「今日は、お祭りに連れて行って頂きありがとうございました。花火をあんなに近くで見られて楽しかったです。それにこの髪留めも、大切にします」
この髪留めだけは、お城を出る日が来ても一緒に持って行きたい。
信長様との思い出の品として。
「そんなもの一つで喜ぶ貴様が見られるなら、全部買い占めればよかったな」
わたしの髪を梳きながら、信長様は優しく笑いかける。
もうずっと胸は騒がしくて痛い程で......
「す、直ぐに褥の用意をします。お疲れですよね」
目を合わせることが恥ずかしくて、その視線から逃げるように隣の部屋へと体を向けた。
「寝る用意なら、女中に事前にさせておいた」
信長様はそう言って私の動きを止めて奥の部屋の襖を開けた。
行燈が一つだけ灯された薄暗い部屋には、既に褥の準備がされてあり、その光景に余計心の臓が騒がしくなった。
「っ..........ありがとうございます」
「.............空良」
背後から、信長様が優しく私を抱きしめる。
「は、はいっ!」
恥ずかしくて、きゅっと身体は縮こまり力が入る。
「ふっ、すぐ固くなる。貴様はいつまでたっても生娘の様だな」
私の髪を撫でながら耳元に触れる声は甘く優しくて、ドキドキが止まらない。
「空良」
顔を少し後ろに向けられると待ち構えていた唇が重なった。
「..ん」
私の唇を舌先でなぞり、僅かな隙間を見つけると押し開けて私の口内へと侵入してきた。
「ん.......」
歯列をなぞり口内を舌先でくすぐると、私の舌とぶつかり一気に絡めとられた。
花火の時にも思ったけど、今日はいつも以上に口づけが優しい。
まるで本当に溶かされているみたいに思考も体の力も奪われていく。
シュ、........シュ、と衣擦れの音が耳に届き、目を開けると信長様が私の帯を解いている。
「んっ!..........っの、信長様!?」
こんな状態で、何を今更とは思うけど.......
口づけを止め、お約束のように、帯を解く信長様の手を止める。