第9章 休戦日
視線を、ものすごく感じる......
花火にも慣れて来てチラリと横目で信長様を見ると、なぜか花火ではなく私を見つめている。
「.....あの、花火を見ないんですか?」
暗くて顔はよく見えないけど、花火が上がるたびに照らし出される信長様の顔はとても穏やかで、艶っぽくて......
「俺の分も貴様が見ておけ。俺は楽しそうな貴様を見たい」
そう言って私の横髪を一房手に取ると、ゆっくりとその髪に唇を近づけて、口づけた。
どきどきと、花火と同じくらいの音で心の臓は早鐘を打つ。
ドーーーーーーンと花火が上がると、その光が湖面にも反射して、私達二人を照らし出す。
「わぁ、この花火もきれいですね」
本当は花火鑑賞どころではなくなっていたけれど、恥ずかしさと顔が赤くなっていることを悟られない様に、花火に集中しているフリをした。
「やはりこちらを向け」
「えっ?....わっ!」
手に握った私の髪をくんっと軽く引っ張られ、信長様の胸に倒れ込んだ。
「あ、あの......」
「貴様が花火ばかりを見るのも面白くない」
大きな手が私の耳元から髪を梳くように差し込まれ、目を合わせられた。
「信長...様?」
「どうやら俺は、花火にまでやきもちをやく程に貴様に溺れておるらしい」
ドーーーーーーンと上がった花火が私達を照らしだすと、自嘲気味に笑う信長様の顔が目の前にあった。
「っ.......」
嬉しさと、ドキドキと、極度の緊張で、もうどう言葉を返していいのか分からない。
「そんな困った顔をするな」
無言で信長様を見つめる私の態度を困っていると捉えた信長様は、少しだけ寂しそうな顔をしながらその顔を近づけてきた。
ちゅっと、唇が軽く重なる。
「あの.....」
ちゅ、ちゅっと、その唇は何度も優しく私の唇を啄んだ。
幸せがじわじわと広がっていって、胸が擽ったい。
「空良、貴様を愛してる」
ドーーーーーーンと、再び大きな花火の音が頭の後ろで聞こえたけど、
「んっ..........」
頭の後ろに手が回り、啄むだけの口づけが深いものへと変わると、その音もどんどん薄れて行き、強引に口を割って入ってきた舌に吸い取られるように舌を絡めとられると、もうその事に夢中になって口づけあった。