【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第1章 記憶と感覚
車を発進させ無言のまま駐車場に着くなり徐にのスカートのスリットに手を掛ける。
『ちょ、ちょっと何してるのよ!』
抵抗するも両手首を片手で掴まれ、細身に見える彼の手も腕も振りほどけずビクともしなかった。
ゆっくりと捲られるスリットをただ呆然と眺めていると左腿に差し掛かったあたりで安室の手が止まった。
そこには本人ですら気づいていなかった"何かの痕"が残されていた。
『ねぇ、この痕って何?』
の腕を解放するとその"何かの痕"をそっと指で触れる安室はやはり複雑そうな表情をしていた。
優しく触れられ一瞬だけ身体がピクッと反応をした。は全く読めない安室の行動に少し苛立っていた。
『ねぇ?あなたパーソナルスペースがバグってるの?』
ハッとしたように身体ごと離れた安室。
その瞳が揺れていた事には気づかなかった。
「すまない」
『あなたそればかりね』
『さよなら』
そう言い残し自分の車に乗り込みエンジンをかけると振り返ることなく車を発進させ駐車場を出た。
知り得た情報は安室は"私"を知っていた事だけ、何も語らない彼と意味深な行動に振り回され時間の無駄だったとため息が溢れた。
『…時間の無駄…か…』
自分が何者かわからず、頼みの綱だった毛利小五郎と関係性もなく、やるべき事すら無くなった。
『時間だけなら有り余ってるか…』
自嘲気味に笑うしかなかった。
地下駐車場へ車を駐車しカードキーを使いマンションの中へ入る。
『これはマンションのカードキーで合ってたのね』
エレベーターに乗り部屋に戻り、お風呂にお湯をはった。
『収穫のない1日だったなぁ…』
バスタブに浸かり太腿にある"何かの痕"を観察した。
2本の細いベルトのような痕と安室が触れた何かの傷跡のような物。
『これってもしかして…』
寝起きに見たガラスケースの中に、痕の形状と合いそうな物が思い出される。
早々にお風呂から出ると身体にバスタオルを巻きガラスケースの前まで急いだ。
『…指紋認証??』
朝は気づかなかった。
ガラスケースの右端に指紋認証と思われるシートが貼られていた。
指を触れるとケースは自動で開いた。
『…もう、何もかも普通じゃない』
自然と溢れた"普通"に本人は気づいていなかった。