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【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】

第11章 



「2~3日留守をする」

ジンはそう言いながら、振り向きもせずにドアを閉めた。
いってらっしゃいの一言も待たずに。

『…いってらっしゃい』

1人残された静かな部屋で、今さら声など届かなくてもぽつり呟く。
ジンは時折、このように家を空ける。
数日間戻らないこともままある。
でもの育った環境に、誰かと常に生活をするという習慣はない。
実の母親でさえ、当たり前のように家を空け続けて、まれに帰宅していた。
男を連れ込み始めると滞在日は増えるのは、例外だ。

は朝食を食べ終わると、ジンの残した食器とともに片付けはじめる。
いかにも朝食など食べそうにないジンは、の作る朝食を残したことはない。
いただきますもごちそうさまもないし、片付けることもないけれど。
でも、誰かと朝食を食べるのは、少しだけ嬉しかった。
値切りのパンでも惣菜でも、パンの耳でもない。自分の食べたいものを自由に作って誰かと食べられるだけで十分だった。
洗い物を終えて、テーブルに置かれた綺麗な箱に手を伸ばした。

『えっと…、牛乳といちごと…バナナと』

箱の中には、お小遣いと呼べるほど可愛くない額のお金が入っている。
ジンから貰う生活費だ。
そこから必要な分を取り出して、近くのマーケットに出かける。

がジンと共に生活をするようになってから、特に監禁されているわけでもない。
端から見れば誘拐にあたるのは、幼いにでもわかる。
しかし、その生活に不自由さは一切ない。
食べるものの無くなる心配も、電気とガスが使えなくなる心配も、痛い思いをする心配も、何もなかった。
人としての底辺を経験したは、十分すぎる贅沢だった。

ジンはいつも通り予定通りに帰宅をする。

『おかえりなさい』

ただいまが返ってくるわけではない。
出迎えるを一瞥すると、コートやら服を脱ぎながらの頭に乗せていく。
それらをハンガーにかけ、服の類いは洗濯機に放り込む。

そして、テーブルに置かれた紙袋をジンが指をさす。
ごく稀に、こうして何かしらお土産に買ってくることがあった。
前々回は子供のお土産に似つかわしくない、真っ赤な宝石のついたバレッタ。前回はサバイバルナイフだった。

ジンには土産のセンスがなかった。

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