第3章 予兆と徴標

目覚めると知らない天井が目に入り、急いで上体を起こせば目眩で布団の中に舞い戻る。

『……ここ、どこ…？』

周りを見渡すと立派な部屋で、例えるなら工藤邸の様だな…とは思った。

ゆっくりと身体を起こし、意識を手放すまで覚えていることを脳で処理をする。

（全部、全部覚えてる……忘れられれば良かったのに…）

ローテーブルに自分のバッグが置かれている事に気づいた。
手足に力が入るか確かめてベッドを出ると、ソファに腰を掛けバッグの中身を確認する。
スマホだけ無くなっていた。

ゆっくりとドアに近づき、そっとドアを開き、様子を伺う。
廊下へ出て音がしないようにドアを閉める。

（やっぱり…、ここ工藤邸だ…）

廊下を歩き部屋を何個か過ぎたあたりに階段があった。
降りると何度か紅茶を飲んだ見覚えのある部屋だった。

「おはようございます、目覚めましたか？」

気配も物音も何も無く背後に彼がいた。

『沖矢…昴…』
「そんなに怖い顔をしないでください、さん」

一歩、一歩とゆっくり近づいてくる沖矢には身構えた。

（あと五歩…四歩…三歩…今！）

感覚がそうさせたのか、間合いを測り自分より大分高い位置にある頭を目掛けて回し蹴りを放つ。
パシッと良い音と共に足首を掴まれていた。

「本当に…足癖も悪いな」
『っえ！ちょっ、ちょっと…待って、離して！！お願い！！！』

振り下ろすはずの片足が高い位置で止められバランスを崩す手前で焦りだす。


『おっ、お願い！離してっ！やだっ！！転ぶ、からっ！』


そしてスカートのためパンツも丸出しという恥ずかしい格好だった。