第2章 錯綜と交錯

そこには女性の服や下着などが保管されていた。

『え？』
「のだ、全部」

その数を見れば2〜3日遊びに来ましたという物ではなかった。
季節感もばら付きがあり長年"私"が彼と過ごした形跡だった。

『零…ごめんね。思い出してあげられなくて…』

が姿を消していた間に彼はクローゼットを開けたのか、中を見て何を思ったのか、今まで捨てずにいたのは何故か…胸が締め付けられる思いになった。

「それは…本音を言えば寂しいくないとは言えない。それでも生きてくれていたと知れただけでも…良かったさ」

これのどこが本音だと、安室の口にできない本音は…寂しい、辛い、愛しい、閉じ込めたい、抱きたい、思い出してくれと多くの思いで心の中は占められていた。

『ありがとう、…どうしてこれを？』
「元はの物だ、つかってくれて構わない」
『確かに…既視感はある。でも私が使ってもいいの？』
「もちろんだ」
『そっか、ありがとう！保管も…』

クローゼットを閉じるとリビングに戻る。

「、昼は俺が作るよ」
『ふわとろオムライスが食べたい！』
「ははっ、まかせろ！」
『まかせた！』

が好きで良く作っていたものだった。
はソファに戻るとまたスマホを手に取りゲームをはじめる。
その姿に図々しさなど感じる訳もなく、ただ寛いでいる彼女がそこに居て、今日の夜も一緒だという事を嬉しく思い安室は頬を緩ませていた。

本来なら彼の生活は、早朝ジョギングから筋トレと、並大抵のストイックさではない生活を送っている。
2日間もサボるなどあり得なかった。

それでもこの時間を手放す事はできなかった。

昼食を取り後片付けを終え、さすがにまたゲームというのも味気なく思っていると…

『そういえば観たい映画あったの。どうせ一人だし諦めてたんだけど』
「行くか？」
『うん！』

はさっそくクローゼットから服を出しに行く、その行動一つ一つが安室を嬉しくも苦しい気持ちにさせている事など知る由もなかった。