【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第10章 零の奪還
の背後のスライドドアが開かれると、男は素早く扉を閉めた。
「挨拶はすんだの?」
「まだです」
男はに右手を差し出した。
「貴女のおかげで入院中快適に過ごせました。ありがとう」
降谷と同様に、身寄りのない男のサポートもジョディから頼まれが行っていた。
そして男の着ているスーツも、の選んだものだ。
そのお礼の挨拶かと、差し出された右手を握り返すと、手の甲を上に引き寄せられる。
同時に長身の男が上半身を屈ませた。
『ちょ…』
手の甲に男の息がかかり唇が掠める前に、は思い切り手を引いた。
「あら…」
ジョディは何故か残念そうな声をあげた。
『油断も隙も…』
非難めいた視線を投げ掛けても、それはどこ吹く風で、男は肩を竦めただけだ。
「貴女があの男に飽きた頃に」
『飽きません!!!』
「残念です」
その表情のどこにも残念さは垣間見ることはできなかった。
「こほん。では、さん。我々はこれで」
野次馬根性で2人を見つめるジョディをよそに、場の収集がつかなくなる前に声をあげたのはキャメルだった。
『は、はい。よろしくお願いします』
男はまだを見つめていた。
『あなたも私も…真っ当に生きるの。もう影を歩かなくても良いようになるの』
「そうですね。あなたが望むのなら」
『望むわ』
何でも器用にこなしそうな男だ。
新たな彼は、どこでも溶け込み生きていけるだろうとは思った。
だから望むと即答した。
男は目を細めて笑むと、ジョディ達と日当たりの良い廊下を歩いて行く。
どうか彼の行く末が少しでも明るいものであるようにと願い、姿が見えなくなるまで見送った。