【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第10章 零の奪還
『ベルモットに、…ジンに情がないのか聞かれたわ』
今もその答えは出ていない。
『何も言えなかった…。憎む思いもあるけれど…それだけでは片付けられないって知ってしまった…』
幼少期にがジンに拾われたことは降谷も知っている話だ。
しかしは詳細を伝えていない。
どんな経緯があって、ジンと知り合ったかを、は包み隠さず伝えた。
母と顔ぶれの変わる男達からの虐待、それが性虐待に変わりそうになり、必死に足掻いて逃げた先に、ジンがいたこと。
保護なんて優しいものではなかったけれど、幼く弱かった自分にとっては救いであったこと。
おおよそ子供に対しての教育とは思えない、逸脱した教えを受けてきた。
それでも親から誉められた経験のなかったには、不器用ながらにジンから誉められたことは嬉しくて仕方がなかったこと。
『愛情なんてきっと欠片もなかったと思う…けれど…』
ここまで考えてみても明白な答えは得られない。
でも、ただ憎むこともできない。
『記憶を取り戻しても、私は自分自身がわからない…』
「…」
『それにね、ジンがいなければ、零にだって出会えなかった』
唯一、答えがあるとすれば、降谷零に出会えるか出会えないか。
『彼の気まぐれで私を連れ去ってくれなければ…』
重ねていた降谷の手がの指を絡めた。
「…、キミはどうしたい…」
『ベルモットは、哀れなジンを預かるって言ってたわ。彼女の言う通り、この先…ジンと会うことがないのなら、もう…』
降谷はゆっくりと息を吐いた。
「僕の一存ではどうにもできない。例え…僕が追わなくても、ヤツを追う人間はいる」
『わかってる…』
「けれど、幼いを救ってくれた恩は、忘れずにいたい」
『うん、十分だよ。ありがとう』
複雑そうに笑う降谷に、も肩の力が抜けた笑顔を返した。
とジンの関係は、様々な教えを受け、捕まり自白剤を打たれて、命を救われて、命を狙われて、命の奪い合いもして、記憶まで失った。
まるでイビツに歪みきった愛憎劇のようだ。
にはジンに愛された記憶はないけれど、不器用な彼なりの愛はどこかに存在したのかもしれない。
だからベルモットは言ったのだ。
"哀れな男"だと。