【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第10章 零の奪還
は、階段へ半歩進み出た。
段差へ差し掛かる瞬間、拘束していたジンの力がほんのわずかに緩んだ。
(やり合っても勝算なんて無い、けれど…!)
上体を屈めてジンの腕から抜け出た。
「!」
半歩進めた右足を軸に、階段を思いきり踏みしめた。
開いた床を飛び越え、ジンの対面に立つ。
『ジン、今度こそ、終わりにしましょう』
は胸元のネックレスの宝石を押し込んだ。
すると、胸元にはコナンのベルトと同様にサッカーボールが飛び出た。
それを思いきり蹴りあげた。
「お前まで妙なものを…」
しかし、蹴りあげたサッカーボールはジンの左側を素通りし、背後の壁に当たりドンと音をあげ小さな花火が散った。
「どこを狙ってる」
『蹴るのは得意だけれど…、ボールを蹴るのは教わってないもの…』
「……」
は平静を装い誤魔化した。
『あなたの目的はなに?裏切り者の抹殺?』
仄かな灯りに照らされたジンの表情は、怒りも笑みも映していなかった。
「ミスティ、お前は…」
『…?』
「お前だけは、誰にくれてやるつもりはねぇよ」
『…私?』
それはまるで、激しい執着心や所有欲のようなものを感じる。
自身、幼い頃にジンに拾われた身分だ。
ジンの望むまま、ジンの理想の人形だった。
しかしそれは降谷と知り合うまでの話だ。
『私は…、もう戻れない』
「バーボン、か」
は頷いた。
「監視任務なんぞ…与えたことが…」
『ジン…』
「いいだろう、ここで終わらせてやる」
ジンはコートの内側に手を入れ、ベレッタM1934を引き抜いた。
銃口は迷わずに向けられる。
『ジン、タイムアップよ』
「なんだ…と」
その瞬間、ジンの背後から乾いた二発の発砲音が響く。
一発は肩を貫き、もう一発はベレッタを吹き飛ばした。
「バーボン…」
忌々しそうに振り返るジンを、更に両手の平を撃ち抜いた。
「今度こそ…終わりだ」
「ぐ…っ!」
「二度と拳銃を握ることはないだろう」
「表のヤツらは…」
「片付けましたよ」
ジンはその場で膝をつき、ふっと鼻で笑った。
「他人なんぞ…信じるもんじゃねえな」
「そうでもないわよ…」
男の声は、男のものではなかった。
「ふふ、久しぶりね」
男は顎あたりに指をかけ、マスクを剥ぎ取った。