【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第10章 零の奪還
『あと数分で…』
自身の前を歩く二人に伝えようとしたの言葉は、薄く開いたコンテナの扉から忍び寄る腕にからめとられた。
握りしめていた麻酔銃は、運悪く手から滑り落ちた。
『ッッ!?』
無遠慮に塞がれた唇には、冷えた手袋の感触と、嗅ぎ慣れた香りが鼻腔に届いた。
瞬時に背筋は粟立ち、指先は恐怖に震える。
紛れもない、ヤツだ。
(……ジン!)
やはり気付かれていた、しくじったと今さら確信したところで後の祭りでしかない。
「逃亡劇は終わりだ、ミスティ」
耳元で囁かれた凍えた声に、否応なしにびくりと肩が跳ねた。
彼はいま、どんな表情を浮かべているのだろうか。
幾度の裏切りによる怒りか、はたまたあのときと同じものか、振り返る遊びは許されていない。
ジンは暗闇の中を迷うでもなく、を半ば引き摺るように奥へと進む。
『っ、んん!』
塞がれた口元の手を引き剥がそうと、必死にもがくの抵抗に構うことはない。
(逃げなきゃいけないのに…、振りほどけないっ…)
の抵抗は軽くいなされ、妨げにもならなかった。
「諦めろ」
『ッッ!!』
夜目は利く方にも関わらず、コンテナ内の暗闇に馴れてはくれない。
せめて得られる情報を、出来うる限り集めようと神経を研ぎ澄ませた。
そして違和感に気付いた。
(ここはコンテナのはずなのに…、どうして)
恐怖によって、時間の感覚を長く感じているのかもしれない。
しかし、それを差し引いても距離が長い。
(普通のコンテナとは違うってこと…?)
少ない情報を得たところで、現状を打破できそうになかった。
(どこに…連れていかれるの…)
ジンが歩みを止めると、カチリというスイッチ音と同時に、金属の摩れる音が聞こえた。
「降りるぞ」
金属の摩れる音は、床にある隠し扉が開いたようだった。
床にはぼんやりとした灯りがともされ、地下に続く階段が姿を現した。
(ここを降りてしまえば…私は…)
おそらく二度と降谷の元へは戻れないような気がしていた。
(そんなのは…嫌)
は階段の前で、最後の足掻きを決意する。