【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第10章 零の奪還
降谷は椅子から立ち上がると、をきつく抱き締めた。
感動の再会を喜ぶ時間は与えられていないけれど、危険が及ぶ場所にまで自身を追ってくるに触れられずにはいられなかった。
「君は…、本当に…」
『わかってる。お説教は帰ったら、ね』
「そうだな、必ず君を連れて帰る」
「一緒に帰るよ」
もまた降谷の首元に顔を埋めると、きつく抱き締めた。
そして、離れがたさを振り切ると、どちらともなく温もりを手放した。
『零、動ける?』
手首や首、足首と身体の不具合がないか確認すると、こくりと頷いた。
「問題はないさ」
『動けるなら、作戦に移るわ』
「作戦…?」
「…?」
作戦の前に降谷の出立をどうにかしなくてはならない。
様子を伺う男に声をかけた。
『ねぇ、彼の所持品は?』
男は「あちらに」と木箱を差した。
所持品を取りに男の横を通りすぎるなり、の首に腕をかけた。
『っ、…』
男に対してどこか気を抜き、目論見も行動も察することは出来なかった。
男はただ静かに言葉を続ける。
「静かに」
「を離せ」
の身を囚われた以上、うかつに動くわけにもいかない降谷だったが、肩の力を抜き男を見据えた。
「何度も言いません、お静かに」
男は暗器の細いナイフを指先から覗かせている。
その剣先はの首筋にむけられた。
「作戦とは何です?」
『あなたにとっては、不都合かもしれないわね』
降谷の身体が動く以上、達の作戦に支障はない。
と、同時に、それは男にとって任務の遂行の妨げになるものだった。
「本当に…、あなた方はどこまでイレギュラーな存在になるのですか」
待ち受ける作戦もさることながら、男は更に違和感を覚えた。
にも降谷にも、どこか焦りを感じ得ない。
に至っては、埠頭で対峙したときも、ましてや乗船時にすら動揺は見られなかった。
ただの肝の座った女かと、男は思っていた。
「貴女も、…そして貴方も随分と落ち着いていますね…」
「この場合、心配に値するのは、残念ながらあなたの方だ」
そう、囚われの彼女は 。
静観する対面する男は、公安のゼロ、降谷零だ。
目論見を誤ったのは、男も同じであった。