【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第10章 零の奪還
男は規則正しく、ポコ、ポコ、と脱力しているの肺へ空気を送り始める。
(…ライ)
汽車での爆発に取り乱したは過呼吸に陥った。
あの時と同じように、この男が自身の施す行為、既視感の先にはライがいる。
(彼には随分と…、助けられた…)
次第に呼吸は落ち着きはじめ、は男の胸をぐっと押し返した。
「も…、大丈夫…」
男は唇をそっと離す。
は意識的にゆっくりと、取り戻した呼吸を繰り返した。
(そっか…、私は……)
そして、取り戻した記憶も噛み締める。
彼らから聞いた話の通りだった。
(私はジンを…、ジンは私を……)
ジンの人形と呼ばれた存在が、ジンと組織を裏切ってまで愛した男がいたという真実。
は支えられていた男の腕から抜け出ると、降谷へ向き直り抱き締めた。
「また…忘れちゃってごめんね…」
返事のない降谷の首元に顔をうずめながらそっと声をかけた。
「指輪…、置いてきちゃってごめんね…」
そして、白い世界で交わした、彼らとの約束。
「ゼロを頼むよって言われたの、私。それなのに…」
全てが抜け落ちてしまった。
また降谷を悲しませて、皆にも随分と心配をかけてしまったと視界は滲んだままだ。
「私、助けに来たよ」
顔を覗きこみながら頬へ手をかざし、唇をそっと触れさせた。
眠りについたお姫様を起こすためにはキスをすると、映画で観た王子様は言っていた。
降谷が同じことをしていたことは、眠るは知る由もなく。
「ね、起きて、……零」
その声に応えるように、ピクリと降谷の肩が震えた。