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【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】

第10章 零の奪還



呼吸は徐々に荒くなり、込み上げる吐気に口元を押さえた。

あの日ジンによって与えられたバーボンの監視、それ以降の記憶は波のようにに襲いかかる。
しかし、到底耐えられるようなものではなかった。

「う…、ぁ…」

突然口元を押さえたと思いきや、小さく震えながら蹲るの様子に、ジンは扉の前に立つ男へ視線を移していた。

「何を投薬した」

その瞬間、男は冷や汗を浮かべた。
ジンという男の、見切りの良さを知っているからだ。
白でも黒でも、グレーでも、ジンには関係がないのだ。

「私どもは何も。投薬はおろか…」

ひゅっとの喉が鳴った。
二人の視線もに移っていた。

「過呼吸のようです」
「見りゃわかる」

胸元をきつく握りしめながら、空気を求めて必死にもがいても息は吐き出されるだけで、一向に肺は満たされない。
ジンは自身と視線が絡んだことがトリガーになり、今の状況に陥ったうえ、更に、今の今まで記憶が抜け落ちていたことも悟った。
自身を破滅にまで追い込みかけたが、臆することなく、何事もなかったように自身と再会した違和感に納得した。

「そーゆーことかよ」

すっかり興醒めしたジンはから離れると、扉の前に立つ男へ目配せをして部屋を出ていった。
人命救助とは縁遠いジンでも、過呼吸の応急措置くらいはできるのだ。
しかし、引き金が自身である以上、何をしても無意味だと判断していた。

男はへ近付くと、上体を起こしてから口元へハンカチをあてがい、ゆっくりと背中を擦りはじめる。

「落ち着いてください、大丈夫です」
「う…、うぅ…、ん…」

思い出された様々な出来事と、苦しさによって生理的な涙はぼろぼろと流れていた。

「く…、っ、る…し…っ…」
「大丈夫です。ゆっくりと呼吸をしてください」

状態が落ち着く兆しの見えないの表情は、苦痛に歪み、血の気は徐々に失せはじめていた。
男は口元へあてがっていたハンカチを外し、細く節榑立つ指がの顎をそっと掬い上げた。

「…失礼します」

そう声をかけたのち、自身の唇を押し当てた。

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