【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第10章 零の奪還
国産が誇る高級車なだけあり、車内の静かすぎる空気に耳鳴りがしそうな気分のだった。
夜の海をぼんやりと照らす月と、変化の少ない沿岸を車窓から眺めていた。
そしてたどり着いたのは、広い埠頭だった。
1隻の貨物船の前で車は停車した。
後席のドアは丁寧に開かれた。
「黒澤様がお待ちです」
『そう呼べと言われているの?』
男は答えることなく、貨物船に向かい歩き出した。
もその後を追う。
金属製の渡板が、コンクリートと船を繋いでいる。
(案の定、海へ出る気ね)
抵抗することなく貨物船に乗り込んだに、男は少しだけ意外そうな表情を浮かべた。
「肝が座っていますね。大抵はもう少し怯えるものです」
『……本当は怖くてたまらないの』
はすり寄るように近付き、男の指に自分の指をするりと絡ませた。
の予想通り、指には特殊な硬質化を感じ取れた。
『なんてね。あなた…日常的に銃を撃っているのね?』
「なぜ」
絡める指を滑らせる。
『ほら、これは相当撃ち込まないと、ね?』
「は、離してください」
男ははじめて動揺を見せた。
耳元に唇を寄せ囁いた。
『あら、ダメよ。これくらいで仮面が剥がれてしまったらジンのことは騙せないわよ』
黒の組織ですらノックがいたのだ。
ここに潜っている人間がいてもおかしくはない。
組織やマフィアでも、スキルに長けた人間は多い。
しかし日常的に拳銃を撃ち込み、手のひらや指に変化を見せるのは、別の話だ。
はボディチェックをされた時に、それを見抜いた。
『中国系だとすれば…特务(特殊工作員)?』
「あなたは…一体…」
は男の指を解放した。
『…碌でもない女よ』
「…案内を続けます」
『待って。彼は…無事なの?』
男は少しだけ振り向き呟いた。
「どこまでを無事と表現できるのか…、生存はしています」
『それだけ聞ければ良いわ、ありがとう』
は小さく息を吐いた。