【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第10章 零の奪還
玄関から聞こえる慌ただしい足音にが振り向くと、息を切らしたバーボンが立っていた。
謎の高校生と組織の人間が自身を含めて4人、異様な光景としか思えなかった。
「!」
『どうしてバーボンまで私の名前を呼ぶの…』
彼はの眠るベッドに頭を預けて寝ていた。
薬指にはリングがはめられていた。
距離感は極めて近いと推測できる。
もしも自身が本当に記憶を失っているならば…。
『あなた私の恋人かなにか?』
"元カレか何か?"
以前も2人の間には似たような会話があった。
その時の彼は、自身の正体を明かせなかった。
バーボンはワイシャツの胸元をぎゅっと握りしめた。
「そうだ、君とは恋人関係にある」
ひどく辛そうなその表情は、なぜか胸を締め付けた。
『コードネームはバーボン。ジンに与えられた任務で、明日からあなたの監視をするはずだった……』
は一呼吸する。
『私の昨日までの記憶と、今日の現実では説明のつかないことが多いわ。本当に記憶を失っているんでしょうね…。ねぇ、組織は……どうなったの…』
「囚われた君を取り戻すために、降谷君が壊滅させた」
『降谷?』
ライはバーボンに視線を移した。
『そう…、皮肉な話ね。私から全てを奪うなんて。でもあなたたちの知る私なら、どう答えるのかしら…』
は紅茶に口をつけた。
疲れた脳に紅茶の糖分がじんわりと染みていた。
「さんは、あの時戦っていたよ」
『私が…何と?』
「組織と、ジンとさ」
はその話だけは受け止めることができなかった。
『ははっ、私が?ジンと?ジンはマトモじゃないけれど、私の育ての親みたいなものよ?』
青年もシェリーもライも驚きを隠せなかった。
その事実を知るのは、この場には1人しかいなかった。
「知っている」
バーボンだった。