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【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】

第10章 零の奪還




うっすらと滲んだ視界は、真っ白な部屋と、宙を掴もうとする自身の手をとらえていた。

扉がスライドすると、青い花の飾られた花瓶を抱えた1人の女性が現れた。

「っ?目覚めたのね!?」

と呼んでいる女性をぼんやりと眺めていた。

『……?』

徐々に鮮明になりつつある視界に映る女性は、悲しそうな顔をしていた。
しばらくすると、白衣を着た担当医と名乗る男性と数名の看護師がやって来た。
診察や問診を受けるうちに2つの事実を知った。

(記憶喪失…と…、半年も眠り続けたとは…)

あまり動揺はしなかった気がする。

それよりも、窓からそよぐ風にのる、良い香りのする花が気になった。
この部屋にはたくさんの同じ青い花が飾られている。

看護師に聞くと、一輪だけ花瓶から引き抜いてくれた。
切り口はとても綺麗で、丁寧に世話をされていたのだと想像はつく。
それは自身にも言えることだった。
半年も寝たままだとは思えないほどに髪はサラサラと肌心地も悪くない、なにより身体の痛みがない。

その事を看護師に聞いてみれば、2人ほど献身的に世話をしてくれた人がいると知った。

診察が終わると担当医と看護師は順に部屋を出ていった。

窓の外や手元の花を眺めていると扉がノックされ、顔をのぞかせたのは先程の女性と見知らぬ男性。
宮野志保と降谷零と名乗った。

青い花はブルースターと言って、私の好きな花だと聞いた。
自身の名前も知った。
何ひとつ、ピンとこない。

そんな私に彼は言う。
淀みなく真っ直ぐな眼差しで、大丈夫だと。
たった一言ありがとうと伝えた。
なぜだかそれが嬉しくてたまらなくなって、気がついたときには涙が溢れていた。

彼は私を強く抱き締める。
私は私が驚かないことに驚いた。
自然と腕はのびて彼の背中にしがみついて泣いた。

なんだかとても懐かしい香りを感じた。

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