【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第10章 零の奪還
コンコンと扉をノックする音がする。
降谷が迎え入れると、コナンと灰原と蘭の姿があった。
蘭は病室を見渡すと、少し複雑な表情を浮かべた。
見舞いの花をおずおずと降谷に差し出す。
「かぶっちゃいましたね」
降谷はやわらかく笑うと花を受け取った。
あの時ジンに伝えた好きな花の話を耳にしたコナンが元になり、訪問者は決まってブルースターを手にしていた。
降谷もまた例外ではなかった。
ひとしきり会話を終えると訪問者は帰っていくという日々が続く。
術後の経過も良く、青白く生気の抜け落ちていた顔は、すっかり血色を取り戻している。
見慣れた寝顔のまま眠るは、それでもまだ目覚めない。
確かめるように手に手を重ねれば、そっと頬を撫でれば温かく、降谷はその都度が生きていることを実感できた。
眠り続けるにそっと口づけをしてみた。
お姫様はそこで起きるはずだと、馬鹿げたことも考える。
「現実は…お伽噺のようにはいかないな」
窓の外のまあるい月がを照らしていた。