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【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】

第10章 零の奪還


ふわりふわりと身体は軽い。

(?)

腹部に手をあててみる。

(痛みも…傷痕もない…)

覚えのない真っ白なワンピース。
視線を前へ移す。

(なーんにも…ない…)

どこまでも真っ白は続く。
風も香りも、何もない。

(…そっか…私)

自身を悟る。
往く宛もなく、ただ歩き出す。

(また約束守れなかった)

何度も自身の手を繋ぎ止めた彼を思う。

(…もう、ごめんねもありがとうも伝えられないの)

とぼとぼと歩く先はやはり真っ白。

(あれ…)

ふと歩みを止める。

(…なぜ?)

意識が前へ前へと集中していたことに気がついた。

(後ろは?真っ白なの?)

しかし振り返るのは、少し怖く思える。

(…んー…)

お決まりのあのポーズでしばし考える。
隣にふと人の気配を感じた。

『…え?』

顔にうっすらと霞みがかる男性だった。

『あなたは…』

かろうじて見える口元は動いている。
しかし声は届かない。

『…変わらない?』

動く口元を注視する。

"君のそのクセ、変わらないな"

『あなたは…誰?』

彼は答えない。

"さぁ、行こう"

彼は言う。

『行くって…どこへ行けばいいの?』

"振り返るんだよ"

彼は後ろ向きのまま1歩、また1歩と後ずさった。

『あ…待って』

彼を追うように思わず振り返ると、そこにも顔に霞みがかる男性が3人立っていた。

『…あなた達は』

そのシルエットには少し覚えがあった。
玄関に飾られた1枚のあの写真。

『ねぇ、もしかして』

彼は手をさしのべる。

"ほら早く"

そっとその手をとると後ろ向きのまま彼らは歩き出す。
前を向いているのは自身だけ。

しばらく進むと腹部の痛みを覚えた。
痛みの先には、消えていた傷と、白いワンピースに染み出した血液は、徐々に広がり色を変えると、次第に自身の着ていた黒いワンピースになった。

『…痛い』

進めば進むほど痛みは増す。

『待って…どんどん痛くなるの…』

しかし彼らは声を聞き入れることなく歩き続ける。
どれほど歩いたのか軽かったはずの身体は、鉛のように重くなっていた。

『どこまで…』

"もうすぐだよ"

『もう歩けないわ…』

"ほら歩かないと"

『どうして…』

彼らはやはり答えることはなく、後ろ向きのまま歩き続ける。

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