【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第10章 零の奪還
「コナン君!ありがとう。ナビを頼めるか!?」
「もちろんだよ、安室さん!」
時には腹の探り合いを強いられるほどの関係にあった彼らもまた、ひとつの目的を共有しあえる縁となっていた。
「でも安室さん、ありがとうは全てが終わったら、だよ!」
「…そうだな…!」
コナンは追跡メガネにあらかじめダウンロード済みのMAPを開くと、爆破の起きた棟への最短ルートを的確に伝えた。
爆発によってルートをふさがれ、迂回した2人は、枠のみが残された窓から侵入をはじめた。
爆発元に近づくにつれ建物の損傷はひどく、その有り様は2人を更に焦らせていた。
(大丈夫だ…なら…)
崩れた壁を踏みしめ進み続けると、自身を落ち着けようとする降谷を嘲笑うように、道は途絶えた。
そこにあったであろう床も壁も無く、探し人の姿も見当たらず、爆破によりぽっかりと抉られた大きな穴の空いた残骸のみが残されていた。
規模の大きさに言葉無く呆然と立ち尽くす2人に、崩れる壁の軋みでも、建物の音とも違う、小さな金属音が耳に届いた。
顔を見合せ頷くと、音の方へ足を向けた。
ガラスのない窓と砕けたコンクリートが散乱する廊下の先、瓦礫の山の横に黒いハイヒールが転がっていた。
うるさいほどに鼓膜を叩く心音に生唾を飲み込み、じっとりとした汗が降谷の肌にまとわり着いていた。
しかし瓦礫の影に残されていたのは壁に撃ち込まれたフックガンとだらりと垂れ下がるワイヤー。
壁から床にかけ薄く延びた血痕と、小さな血溜まりのみだった。