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【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】

第10章 零の奪還


目覚めた部屋は先日まで自身が拘束されていた病室で、拘束の類いは一切されていない。
手錠の嵌められてない両手首を見つめた。

『…どうして』

痛む首元にそっと触れてみると包帯が丁寧に巻かれている。

『…失敗したのね』

真っ白な天井を見上げて1人の女性を思い浮かべた。

『……キュラソー』

今の自分の方が気分が良いと言った彼女。
あの時、もしも記憶が戻ったらと思えば胸がざわついた。

『……私は…』

ため息をつきベッドから起き上がり辺りを見渡すと、ハンガーに掛けられた黒いあのワンピースに着替えハイヒールに足を通す。
部屋の中を再度見渡せば違和感を覚える。

『…なぜ?』

ロック時に点灯していたはずのレッドライトはオープン時のブルーライトに変わり、電子ロックが掛かっているはずのスライド式の扉は難なく開いた。

『…電子ロックが解除されているということは…、誰かが制御室でロックを解除した…?』

慎重に廊下へ踏み出ると、外から激しい爆発音が響き渡り、建物を揺らす振動はビリビリと身体にも伝わった。

『っ…、爆発!?』

表向きは大手製薬会社、実体は組織の本拠地であるこの場所で何かが起こっている。

『一体何が…?』

廊下には多数の組織の人間が慌ただしく走り回り、窓から外を伺うと、かろうじて視界に入るのは離れた建物から上がる黒煙だった。

(誰も…私を気にもとめない…)

顎に親指、唇に人差し指、自身のとるべき行動を考えれば、この機に乗じてひとつの目的を思い付く。

("今の私"にできる事…)

小さな探偵を思う。
組織によってあの薬を投与された被害者。

(APTX4869…)

APTX4869のデータを手に入れることができれば解毒剤への手がかりになり、2度と同じ過ちが起こせないよう全てのデータを抹消すること。
取り戻した記憶には建物の構造はもちろんのこと、ありとあらゆる事柄が手に取るように理解できていた。

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