【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第10章 零の奪還
鈍く鋭い感覚。
脳はひりひりと痺れ、指先は痛い程に冷え切っていた。
霞む視界が捉えたのは、残忍で狡猾ななはずのあの男の顔。
辺りは騒がしく、自身の身体を抱きとめる男が何かを叫んでいる。
深く深い懐かしい香りは、あの頃を少しだけ思い出させる。
(そう…私はただの人形で…)
…とても長い夢を見ていたような気がする。
(……違う、違うの…夢なんかじゃない)
震える指が痛いほどにシーツを握りしめた。
あの時、走馬灯のように、記憶にある映像と記憶にない映像は瞬く間に流れ続け、1本のフィルムにおさまった。
(…こんなの…こんなの、…あんまりだわ)
あまりにも皮肉めいた真実に奥歯を噛み締めた。
(私は…"私"が誰なのかを知ってしまった)
("私"は黒の組織の人間…コードネーム…ミスティ)
(ジンは裏切り者を許さない)
(そして…、バーボン)
(彼は……、私の監視対象者だった)