【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第10章 零の奪還
照明が点々と照らす仄暗い建物の廊下を、行き先もわからず、ただベルモットの後を着いて歩く。
小気味良いヒールの音はカツカツと、2人分が響き渡る。
黒い服に包まれた組織の人間とは数人すれ違っていた。
この中の何人が純粋な黒に染まる組織の人間で、何人が降谷の様に潜入捜査として組織に属しているのか、そんな事を考えながら歩いていた。
やけに明るい部屋の前を通りかかった。
研究室のようでPCや実験器具のようなものがところ狭しと並べられている。
ズキリと痛む頭を押さえた。
会ったことのない、でもどこか面影を感じる女性の映像が脳裏に浮かび上がった。
この研究室では彼女と出会った。
(これはシェリー…、哀だ…)
子供の姿になる前の白衣を身にまとう灰原との記憶だった。
研究室を見つめたまま立ち止まり呆けているの様子に、ベルモットは訝しげに見つめた。
「どうしたの」
『…何でもない』
「馬鹿なことは考えないことね」
馬鹿なこと、とは。
ここで作られているあの薬でも服用すると思われたのか、はたまた致死に至る薬でも狙うと思ったのか、真意はわからない。
『…どこまで行くの』
「もう少しよ」
エレベーターに乗り込むと、ベルモットが電子パネルに5本の指先を翳した。
指紋認証が終わりピッと音をたてると、体感的に上の階層へ向かっているようだった。
数枚の扉がある階へたどり着き、一番奥の部屋でベルモットは足を止めた。
「ここよ」
開かれた扉に促されるまま足を踏み入れると、は嫌な既視感に襲われた。
自白剤を打たれたあの部屋によく似ていた。
後ろ手に手錠を掛けられ繋がれた剥き出しの配管も、その正面にジンが腰をかけていた簡易的なベッドも、思い出したくもないあの光景が蘇る。
『ねぇ、ベルモット。この部屋だけは嫌…』
「それを決めるのは私じゃないのよ、残念ね」
だけを残して、部屋の扉には鍵がかけられた。