【名探偵コナン】Redo*misty【降谷/ 赤井/ジン】
第10章 零の奪還
あの一件から、ジンは時折訪れると口数少なくを抱いた。
ベルモットはあれ以来身体に触れることはなかった。
ただ暇ができれば訪れているように思えた。
『何日経ったの…』
の問いにベルモットは何でもないように答える。
「そろそろ1ヶ月ほどじゃないかしら?」
『そう…』
「来週にはここを出られるわよ」
怪我の治療もそろそろ終わると、白衣を着た男性からも耳にしていた。
しかしその先、どのような身の振り方があるのか想像もつかずにいた。
『私…どうなるの』
「そうね…」
言葉を濁しているのかベルモットは俯いたかと思うと、に向き直り頬を紅潮させ唇は弧を描いた。
「早く良くなって?私もあなたを鳴かせたいし可愛がりたいもの」
『勘弁してよ…』
「大丈夫よ、思い出させてあげるわ」
『ご遠慮願うわ…』
ベルモットは時折この話題を口にしていた。
ただ揶揄されるだけならまだいい、彼女の言う"イイ仲"が事実なら耐え難いものがある。
それはジンにも言える事だった。
数日が経過すると、の拘束は解かれた。
予定通りに病室らしき部屋を出る日となった。
ベルモットに手渡された服に身を包む。
袖と首元から胸元までがレースで仕立てられた真黒な、随分と自分好みなドレスのようなワンピースだった。
「ジンからの贈り物よ」
自分好みは…全力で前言撤回をする。
腕には真黒な手錠がはめられた。
「さぁ、行きましょう」
ベルモットに差し出された手を黙って握り返す自分がいる。
俯瞰的に感じた。
あの一件から怒りを顕にする事も、悲しむ事もなく、感情表現は乏しくなっていた。
灰原の話す"私"と今現在の私がとても似ているように思える。
降谷の話にも喜怒哀楽が少ないと聞いていた。
冷たく感情表現の少ない…いつもジンかベルモットの隣にいた人形。
まさに自分かと自嘲的な笑みを浮かべた。