第1章 記憶と感覚

ちょっと待ってね、から10分ほど経ち他愛のない会話はあれど進まない現状に痺れを切らした。

『コナン君？』
「もう少し待って！」
『…ええ』

コナンのスマホに着信が入る。

「うん、うん、わかった！今からさん連れて行くね！」
『？』

視線を感じカウンターを見ると安室と目があった。
どこか焦っているように見える気もしたが意図を汲むことはできなかった。

「さん、行こう！」
『…どこへ行くの？』
「紹介したい人の所！」
『…わかったわ』

会計を済ましポアロを出る。
今日は安室からの手紙はなかった。

駐車場の前に差し掛かる。

『ねえねえ、車で行っても大丈夫？』
「うん、大丈夫だよ！」

車に乗り込み5分程で到着したそこはかなりの豪邸だった。

車庫に車を入れさせてもらい隣を見ると、豪邸には少し不似合いなレトロで可愛らしい車が停まっていた。

『凄いねー、大きな家』
「親戚の家なんだ！」

コナンがセキュリティを解除し敷地内へ入り、後を付いて行く。
玄関付近まで行くとドアが開いた。

「昴さん、お待たせ！」
「どうぞ」

ドアを抑えたまま背中に手を回され自然とエスコートされるように家に招かれた。
あまりのスマートさに思わず関心したと同時に、知らない人の家に説明もなしに上がり込んだ自分の警戒心の無さに早く呆れただった。

「こちらが沖矢 昴さん、彼女が さん」
『どうも、はじめまして』
「はじめまして」

左手を差し出され握手をした。

（この人、左利きなんだ）

ふと思う。

しかしどうしたものだろう。
彼もなかなかのイケメンぷりであったが、安室並の貼り付けスマイルには背筋がゾッとしただった。

（…これ流行ってるの？）