第1章 記憶と感覚

髪をゆるく巻き、右側にスリットの入った黒いノースリーブワンピースにぺたんこエンジニアブーツ、左腿にはナイフを収めたレッグホルダーを装着した。

銃のショルダーホルスターは左がけだったため右手で使用、恐らくナイフは右スリットを捲り左手で取り出す…のかなと思いつつイメージトレーニングをする。

クローゼットのワンピースやスカートにはほぼ右スリットが入っている事から、最初こそ"好み"の拘りかと思っていたが"用途"の拘りなんだと気付いた。

ポアロを通り過ぎ昨日と同じ駐車場に停める。
隣には安室のFDが停まっていた。
彼がポアロにいる事がわかった。

警戒すべきコナンと会うために、意味深な安室のいる喫茶店に向かう。
そしてこれから会うであろう人は…普通の人だと良いなと思いつつ約束の10分前にポアロに到着した。

ドアを開けドアベルがなり、貼り付け営業スマイル安室と目が合う。

「さん。いらっしゃい」
『どうも、待ち合わせなので適当に座りますね。コーヒーお願いします』

昨日の事が無かったかのような態度に驚くも、彼と一番距離のとれる席へ座る。

至って自然にコーヒーを運ぶ安室。

「お待たせしました」
『ありがとう』

しばらく店内を見渡すと、やけに若い女性客が多い事に気付いた。
彼女達の視線の先には安室がいた。

…確かに顔だけ見れば所謂"イケメン"で端正でありながら幼さも感じる顔。
ブルーの瞳は海のようで綺麗だった。
身長も高くスタイルも良い、褐色肌に金髪も格好良い。

（なんてこと…悔しいけれどイイ男の要素しかないじゃない…）

しかし初対面がアレな上に、胡散臭い営業スマイルにより、には苦手意識が生まれていた。


暫く彼女達を観察しているとドアベルがなりコナンが入ってくる。

「安室さん、こんにちは！」
「やぁ、コナン君！いらっしゃい」

店内をキョロキョロ見渡しこちらに気づく。

「こんにちは、さん」
『こんにちは、コナン君』

このあどけない笑顔を向ける少年がアレを仕掛けたと思うと、些か信じられないけれど用心に越したことはない。

『ここで話しても良いのかしら？』
「少し待ってね！」

顎に親指を唇に人差し指をあてジーッと目の前の少年を見つめる。

「どうしたの？」

小首を傾げ自分を見る少年に最早疑心暗鬼だった。