第12章 蠍の火
「連れて来てくれてありがとう、スチュワード!」
「!…っず、るいなぁ…」
思わず装った平静が剥がされた。
上手く照れ隠しができないままでいると、何故かさくらが慌てふためく。
「!ごめん!!お、思えば何か私が階段で引き留めちゃった気が…!!」
「…いや、そういうことじゃないよ。…ほら、流星雨終わっちゃうよ」
「!お願い事しなきゃ!」
指を組み、山なりに折った膝に額を付けて祈りのポーズをとるさくらを見て、同じように真似てそのポーズをとる。
"君が僕のものになりますように"
「(なんて、ありきたりで子供っぽいかな)」
薄っぺらく、星に願ったところで叶う確証なんてないのに人はそれに縋るように指を組む。長く気持ちを込めて、願いが叶うように、と。
だが、実際にあの時、祈った願いは叶えられていたのだ。
『またここで君と星を見られますように』