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【アクナイ】滑稽な慈悲

第12章 蠍の火



「そういえば傷は!?もう平気!?」

「流石にあれだけ日が経てばね」

「よ、良かった!」


本当に安心した顔で胸を撫で下ろすさくらは、もう一度芝生の上に寝転んだ。その様子を見てスチュワードも寝転びながら羽虫のような小さな声で呟いた。


「…本当に、優しいんだな…」

「え?」

「あ、流れ星」

「!もうその手には騙されないよ!」


完全に手の内が読まれている、と笑った彼の目に白い線が映る。目を見開いてすぐ空に視線を移すとそれは、願い事を言うには十分すぎるほどに流れていた。


「さくら…流れ星だ」

「え?」

「ほら!」


指さした先を追ってさくらも空を見上げた。


「…あ…」


言葉を無くすほどに。思考が全て消えるほどに。その空は、地上の光にも負けずいつにない輝きを降らせていた。


「流星群…!?」

「でもこの数は…いや、流星雨だ」


一つ流れれば二つ、三つと流れていく。それはまるで雨のよう。さくらはもちろん、スチュワードも見るのは初めてだった。


「凄い!綺麗…!」


子供が高いところの物を取るように、立ち上がっては両手を必死に伸ばす。その姿にデジャヴを感じて聞こえないように笑った。
すると、さくらは途端にはしゃぐのをやめ、スチュワードの隣に腰を下ろした。
聞こえただろうか、という不安と共にごくりと唾を飲み込むと、さくらはへらりと笑ってみせた。

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