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【アクナイ】滑稽な慈悲

第11章 救われたのはどちらから



『うわぁあああ…止めてくれ…喧嘩は止めてくれ…』

『俺が止めますよ』


一歩、また一歩と彼女に近付いていく。
バラバラになって落ちている銃の部品を拾いながら、へたり込んだ2人の男の前まで来た時、その部品を組み立て直しながら言う。


『駄目じゃないですか。弾詰まりしたならちゃんと言わないと。戦場でなってしまったらそれこそ死んでしまうんですから、整備はしっかりしてくださいね?』


そう言って、数秒で直してみせてグリップを向けた。実力は戦場で見なくとも、その手つきだけで把握したようだ。素直に頭を下げた。


『は、はい…』

『申し訳ありません、でした』


男たちが謝っている中、満足したらしい彼女がひょいひょいとドクターの方へ戻っていく。
アドナキエルは、すぐにその後を追い、ドクターに手を掴まれてここから去ろうとしている彼女を呼び止めた。


『あの!』


素直にお礼を言うつもりだった。
新人オペレーターに嘗められてばかりでは教官として務まらない。それを見せてくれたお礼が言いたかっただけだった。
彼女は、目をぱちくりとして、アドナキエルの金色の目…ではなく、サンクタの頭についている光の輪を見て"笑った"。


『傾いてる。可愛い。綺麗。本当に天使みたい』

『!』


度肝を抜かれた。この世界ではサンクタは珍しがられるが、所定の位置ではない輪に嫌悪を抱く者が多い。だが、彼女ははっきりと誉め言葉を言ったのだ。

ぶわ、と今まで感じた事のない感情が湧き出て、思わず右手で鼻と口を覆った。


『教官、頑張ってください!』


また笑い、手を振ってドクターに連れられて行ってしまった。この出会いをきっかけに、彼が彼女の隣に居座ろうとするまで、後6日―――

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