第11章 救われたのはどちらから
『(専任の教官がいないから、今日だけ狙撃オペレーターの教官…とは言ったものの…)』
訓練所にて、アドナキエルは永遠に的に向かって引き金を引く新人オペレーターたちの様子を見ていた。外面は笑みと指示を忘れない彼だったが、それは2時間、3時間も続くと精神的におかしくなってくる。
見ているのは良かった。だが、彼の才能を妬んでいない者がいないわけではなかった。
『サンクタなのに銃免許持ってない人が教官…何だか不安だなぁ』
『シッ!聞こえるぞ』
『いいって今日だけなんだし…それに感染者なんだろ?だから頭の上に来るはずの光の輪もずれてるらしい』
特別そういうものを気にする性格ではなかったが、種族として馬鹿にされるのは気持ちのいいものではなかった。
サンクタは銃を所持し、気高く戦うのが誉れ。その全てができていないと勘違いされているアドナキエルは、新人オペレーターの嫌悪対象だ。
それもそうだ。その穏やかな立ち振る舞いからはとてもじゃないが、戦場出向くなんてことは察せない。誰も彼の事を前線で見たことがないためだ。
『(精神攻撃も慣れたと思っていたんだけどな…)』
嫌ほど訓練して慣れたと思っていた。力の無さに罵倒され続ける日々を思い出すと、これは可愛いものだと思っていたのだが、身体は正直だ。目に見えて気分が落ち込んでいく。
彼は初めて他者がいる場で溜息を吐いた。―――そんな時だった