• テキストサイズ

【アクナイ】滑稽な慈悲

第11章 救われたのはどちらから



「じゃあ今日一緒に寝ましょう?」


場が凍り付いた。サンクタという天使はみんなこうなのだろうか。


「待って何それ死ぬよ!!?」

「えっ!アドナキエルくんとさくらちゃんはそういう仲なの!?」

「「は?」」


という素っ頓狂な声が重なったのはスチュワードとだ。どんどんと顔に変な熱が集まってくる。


「待ってカーディ!違う!誤解!!「きゃあー!メランサちゃんに伝えなきゃ!!」カーディイイイイイ!!」

「待てカーディ!メランサはもう寝てるからやめろ!」


走り去っていった2人に、気まずい雰囲気のまま残された。ここが自室でなければ自分も走り去っていた所だが、残念ながら寝る場所はここ以外ないのだ。
くしゃりと髪を握りながら、俯くと、ポンと一瞬だけ手が乗った。


「なんて、冗談ですよ」

「!」


アドナキエルはニコニコとしたまま、カーディが座っていた席に座って頬杖をつく。意地悪い笑みだ。私の反応を楽しんでいたらしい。


「じゃあ何で言ったの…」

「さくらの反応が面白いからですよ。…というのも冗談です。少しお話がしたくて」

「?何の話?」


私が座りながら聞くと、アドナキエルは駒を片付けて行きながら言った。


「元の世界の話。と言えば拒否しますか?」


上目遣いで聞いたその言葉は私の心を大きく揺さぶった。息さえ引っ込んでしまい、その音が聞こえたのだろう。アドナキエルは小さく謝った。


「帰れる方法がないから諦めろと、理不尽に言ったのは俺ですから。…あの時は焦っていてあまりに一方的だったので、不満があるなら話だけでも聞こうかなと」

「…」

「何かあれば、ですが」


変な気を遣わせていたようだ。

あれから考えてはいなかったが、アドナキエルは心配してくれたようだ。
だが目覚めてすぐの今日、この一日が私にはとても充実していて、不満なんか感じているほど暇ではなかった。全ては彼らのお陰だった。それを想う通りに伝えることにした。

/ 216ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp