第11章 救われたのはどちらから
「な、何?」
「その人の陣地を占領したら…言うこと一つ聞くんですよね?」
「待って?そのペナルティ忘れてたんだけど!!?」
試合前にカーディが組み込んできたペナルティというやつだ。そのことを、昔話で頭からすっ飛んでいた私は、負けることを前提に全軍を進撃させたアドナキエルに壊滅させられた。
「思えば絶対私の首取るために来てたよね!?ねぇ!?」
「勿論ですよ」
「うわぁ…あんなに楽しそうなアドナキエルくん初めて見た…!」
そうは言いながらも楽しそうにカーディは傍観している。私がとった陣地はカーディのところであるが故に、後で痛い目見させることを決めた。同時に嬉しそうに何を言おうか考えているアドナキエルを止めに入る。
と、私と彼の間にスッと左腕が伸びてきて、トン、と机に置かれた。
「じゃあ、僕からアドナキエルに命令だ。今日は僕と一緒に大人しく部屋に帰ろうか?」
「あぁそうだった。でもスチュワードは俺の陣地を取らずに勝利宣言したよね?これは無効では?」
このボードゲームは人工知能付きで、相手の状態が駒が無い、または詰んでいる状態であると完全敗北として場を記録する。その時、優勢であるプレイヤーが勝ちを宣言するか、または劣勢であるプレイヤーが負けを宣言するとその場でゲームセットになる。
故に、スチュワードは残ったアドナキエルの陣地を攻めずに終了してしまった。これは果たして陣地占領となるのか。
「本当…興味あるものは譲らないな」
「勿論!駄目かな?」
「…さくら、申し訳ないけど「諦めないでスチュワード!見捨てないで!?」戦略的撤退を行うことにするよ「スチュワード!?」ごめんね」
と、席を立ち始めるスチュワードが苦笑いで私を見下ろす。ブンブンと首を振ってみせるが、背後で天使が嗤ったことにより体が凍り付く。