第11章 救われたのはどちらから
そんな話を聞いた後、ゲームをしている間もずっと何故その指揮官が負けたのか。何故アドナキエルが初戦前に指揮官に対して何故あぁ言ったのかを考えていて、ゲームに決着がついた時、重々理解できた。
「僕の勝ちだね」
一人で勝利を飾ったスチュワードの声で前を向く。すると、周囲の音が聞こえるようになってカーディの唸る声が聞こえて来た。
「あーもーみんな強すぎるよー!」
「カーディは考え無しに突出させるからだよ」
そのスチュワードとカーディの言い合いの中、負けたのにニコニコと笑う天使は、私には今や悪魔にしか見えない。
「その指揮官は、ゲームと現実の区別がつかずに負けたんだね」
手の中にある狙撃オペレーターの駒を見て言う。2人の言い合いがピタリと止んだ。
すると、アドナキエルはタガが外れたように笑いだし、言った。
「簡単な事ですよね。現実では今ある兵士を如何に死なせずに勝利を飾るかが重要です。ですが…ゲームはそうじゃない」
何もない自分の持ち駒のスペースを指で撫ぜては、その戦いを思い出すように恍惚と目を細めた。
「指揮官として彼はとても優秀な方でした。だから、ゲームでも兵士を消費しない選択をしました。でも所詮はゲーム。こちらが恐れず諸刃の剣を振るい、兵士を極限まで出してしまえば…持ち駒はなくなりますが、確実に勝ちます」
「悪魔ぁ!」
「でもこう複数人だと攻められて終わりなんですよ?まぁあの指揮官殿の時はカーディちゃんが欲しいっていうので張り切っちゃいましたね~」
そう言いながら立ち上がるアドナキエルはズイ、と腰を前のめりに曲げ机に手をつき、私に顔を近づけて来た。